被相続人が遺言書を遺していた場合、まず、その遺言書の内容に従い財産が分配され、遺言書がない場合には、共同相続人間の遺産分割協議で遺産の分配について決定します。

相続の手続については、被相続人の意思を最優先する、という考え方が根底にあるからです。

では、遺言書があるにもかかわらず、相続人にとってはその内容どおりに分配することに問題がある場合、遺言書の内容と異なる遺産分割はできるのでしょうか。

遺言書の内容と異なる遺産分割をすることはできる

相続人全員の同意があれば、遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことは原則として可能であると考えられています。

もちろん、遺言書に従って分配した上で、他の相続人にその財産を贈与するなどしていくことは可能ですが、それでは贈与税などの負担も発生しますから、初めから遺産分割協議により分配した方が簡便といえます。

また、特定の相続人に全財産を与える旨の遺言書がある場合に、相続人全員の協議により遺言書の内容と異なる遺産分割をしたときの相続税の課税上の取り扱いについては、受遺者である相続人が遺贈を放棄し、共同相続人間で遺産分割が行われたとみるのが相当であるから、相続税の課税価格は相続人全員で行われた分割協議と同様とされ、受遺者である相続人から他の相続人に対して贈与があったものとして贈与税が課税されることもありません( 出典:国税庁HP)。

遺言書の内容と異なる遺産分割をすることができない場合

しかし、下記の場合には、相続人全員の同意があったとしても、遺言書の内容と異なる遺産分割は認められません。

遺言で遺産分割が禁止されている場合

相続人は、遺言で、相続開始から5年を超えない期間、遺産分割を禁止することができます(民法908条)。
この場合、遺言書の内容と異なる遺産分割はできないと解すべきでしょう。
被相続人が相続分の指定をするばかりか、遺産分割を禁止している場合、その意思を優先させるべきだからです。

遺言執行者が選任されており、遺産分割に同意をしない場合

遺言執行者がいる場合、相続人は遺産に対する管理処分権を喪失し、遺言執行者が被相続人の財産についての管理処分権を取得します。
一方、遺言執行者は、相続人全員から遺言書の内容と異なる遺産分割を求められた場合でも、淡々と遺言書に基づき遺言の執行をすることができます。
そのため、遺言執行者がある場合、その同意が得られない限り、遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことはできません。
なお、遺言執行者が遺言書の内容と異なる遺産分割に同意を与えるということは、遺言の内容を実現すべき遺言執行者としての義務に抵触するとも考えられますが、相続人全員や受遺者の同意がある場合には、法的な問題は生じないと考えられています。

 

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