本日、東松山市からご依頼のS様の抵当権抹消登記が無事完了しました。

実は、今回の案件では、敷地権付区分建物(いわゆる、マンションのことです)に通常の抵当権の他に、同じ債権者名義の「条件付賃借権設定仮登記」が設定されていました。債権担保の手段として、抵当権だけではなく、債務不履行になった場合には、賃借権まで設定するという2段構えで担保の実質を有する賃借権設定の仮登記が登記されていたというわけです。

住宅ローンも完済になり、債権者からは抵当権抹消登記に必要な書類と併せて賃借権設定仮登記の抹消に必要な書類も発行されており、これらの登記は同時に抹消していくことが可能な状態でしたので、お客様にも事情をご説明の上、抵当権抹消登記とともに賃借権設定仮登記の抹消登記のご依頼を頂きました。

ところで、不動産は、法律上は土地と建物がそれぞれが別のものであって、売却や担保設定などの処分も土地は土地、建物は建物で別々に行うことができるのが原則です。ところが、この敷地権付区分建物の場合には、土地と建物の分離処分ができず、土地(敷地権の共有持分)と建物(専有部分)の処分を一体として行わなければならないことになっています(区分所有法22条)。マンションについても分離処分が可能であったとすれば、特に大規模なマンションなどの場合には所有者の数も相当数になることがありますから、権利関係が非常に複雑化し易いことが考慮されたためです。なお、マンションといえば必ず敷地権付区分建物、という扱いにはなっておらず、昭和58年の法改正以前に建築されたマンションの場合、敷地権化されていないこともあります。

賃借権設定仮登記の抹消登記のポイント

今回のような敷地権付区分建物の賃借権(仮登記)の抹消登記のケースでは、我々登記のプロである司法書士としては、決して間違ってはいけないポイントが一つあります。

それは、この賃借権仮登記の抹消登記の登録免許税額です。

通常の抵当権抹消登記の登録免許税は、敷地権付区分建物の場合には、専有部分と併せて敷地権の数に応じて登録免許税を納付します。たとえば、マンションの敷地が3筆からなる場合には、1000円(専有部分)+1000円×3(敷地権の数)=4000円となります。

ところが、賃借権の仮登記の抹消登記については事情が異なり、敷地権に対応する部分の登録免許税は不要で、納付すべき税額は専有部分に対する1000円のみとなります。

これは、そもそも不動産の共有持分に対して賃借権の設定をすることができないことから、敷地権については賃借権設定仮登記の効力が及んでいないため、ということがその理由なのですが、うっかり敷地権の部分にまで賃借権仮登記が設定されていると思いこんでしまうと、大きな間違いということになります。

何事も先入観を持たずに慎重に対応することが大事ですね。

 

【参考先例等】

  • 共有者の持分を目的として地上権等の用益権の設定登記をすることはできない(先例昭37年3.26-844)。
  • 共有持分に対する賃借権設定の仮登記はこれをすることができない(昭和48.10.13 民三7694号)。
 

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