遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずるものとされています(民法985条1項)。
ですから、遺言書を作成しても、ただ作成しただけで遺言者がご存命の段階では、遺言書はまだ遺言書としての効力は生じていない、いってみれば遺言書のタマゴの状態です。
ところで、民法には、「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない」との規定があります(民法994条1項)。
では、遺言者が遺言書によって財産を相続させることを指定した相続人が、遺言書を作成した遺言者本人の死亡以前に死亡してしまった場合、遺言書の効力はどうなるのでしょうか。
このようなケースでは、従来、遺言書で財産を相続すると指定された相続人の子などの相続人(代襲相続人)が死亡してしまった相続人に代わって財産を相続する、との考え方もありましたが、近時判例により、その相続人に対して相続させるとした指定部分については、遺言は効力を生じないものと扱われることになりました(最高裁判所平23.2.22判決)。
以下、最高裁判所の判決の内容を要約してご紹介します。
判例の要旨
①遺言をする者は、一般に相続人との関係において、各相続人との身分関係や生活関係等諸般の事情を考慮して遺言をするものである。
②このことは、遺産を特定の相続人に単独相続させる旨のいわゆる「相続させる」遺言がなされた場合も異なるものではなく、このような遺言をした遺言者(本人)は、通常、遺言時における特定の相続人にその遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと考えられる。
③したがって、「相続させる」旨の遺言によって遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡したときは、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言者の置かれていた状況などから遺言者が死亡した相続人の代襲相続人等に相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、効力を生ずることはない。
まとめ
せっかくの遺言書が、後に生じた予期せぬ事由によって効力を生ずることがなくなってしまうと、新たに遺言書を作成しなおしたり、訂正したりという手間が生じます。
その時点で、遺言者自身が遺言書を訂正できる状況であればそれも不可能ではありませんが、遺言者が高齢などの場合、再度遺言書を作成したり訂正することなどが困難なケースもあるでしょう。
このような心配がないように、遺言書作成の時点で、万が一の場合に備えて予備的遺言をしておくことが必要です。
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