未登記建物とは、法務局に登記がされていない建物のことをいいます。

建物は、登記所とよばれる法務局に①所在、②家屋番号、③種類、④構造、⑤床面積、⑥新築や増築などの日付といった建物の物理的な情報や所有者など所有権に関する情報、抵当権や賃借権など所有権以外の権利に関する情報が登記されます。

不動産は、登記されることにより不動産の情報が公示され、自分の権利を第三者に対して主張することができるような効力を有するのですが、未登記建物については、何らかの事情によりこうした登記がなされていない状態なため、権利関係が明確ではない状態といえます。

そのため、未登記建物は、その建物を相続したり売却したり、建物を担保に融資を利用したりしようとする際に問題となることがあります。

そもそも、建物は登記しなければならない

不動産登記法では、新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、「表題登記」を申請しなければならないと規定されています。

建物の「表題登記」とは、建物登記簿の「表題部」という欄に、建物の物理的な事項を登記する手続です。表題登記がなされない限り、建物自体の存在が登記所に記録されていないのですから、その建物の所有者が誰かとか、どんな権利が付いているかといったことは、登記のしようがありません。もっとも、表題登記をしただけでは、所有者やその他の権利については正式な登記がなされたことにはなりません。

このように、建物の表題登記は、その後に続く所有権の登記や所有権以外の権利の登記の前提となる登記ですから、法律上、所有者や取得者には登記する義務が課せられています。

第47条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。
2 略
引用元:e-Gov 不動産登記法 第47条

未登記建物かどうかを調べる方法

未登記建物であるか否かを調べる方法の一つは、法務局に出向き、該当の土地上に建物が登記されているかどうかを照会する方法です。
土地の正確な地番などが分からなくても、建物が存在する具体的な場所が分かっていれば、法務局には詳細な住宅地図などが備え置かれていますから、それらを参考にして該当する土地の上に建物の登記があるかどうかを調べてもらうことができます。
その上で、該当する土地の上には登記してある建物がない、との返答であれば、現地に建っている建物は未登記建物である可能性が高いということなります。

もう一つの方法は、毎年市町村役場から送られてくる固定資産税の納税通知書等で確認する方法です。役所により様式が異なることはありますが、通常、登記がしてある建物であれば、建物の所在地の他に「家屋番号」というものが記載されています。
家屋番号は、法務局が建物の登記をした際に付される番号ですから、納税通知書等に家屋番号の表記があれば、その建物は登記されている可能性が高いですし、家屋番号の欄に「未登記」と記載されていたり、空欄であったりする場合には、未登記建物の可能性が高い、ということになります。 

45条 登記所は、法務省令で定めるところにより、一個の建物ごとに家屋番号を付さなければならない。
引用元:e-Gov 不動産登記法 第45条

相続登記手続の義務化と未登記建物

令和6年4月1日より、不動産登記法の規定により、相続登記が義務化されました。
相続登記が義務化されたことにより、不動産の所有者について相続が発生した場合、原則として相続の事実を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。この義務を怠った場合には、最大で10万円の過料が科されることとなります。

第76条の2 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3 前2項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
引用元:e-Gov 不動産登記法 第76条の2

しかし、未登記建物は相続登記の義務化の直接の対象ではありません。

それは、先に紹介した不動産登記法第76条の2第1項の規定によると、相続登記が義務となるのは、あくまでも「所有権の登記名義人について相続の開始があったとき」とされているため、そもそも所有権の登記がされていない(所有権の登記名義人がいない)未登記建物については、この規定の射程外となると解されるからです。

ただし、未登記建物が相続登記の義務化の規定の射程外であったとしても、安心はできません。それは、未登記建物には様々な問題を生ずるリスクがあるからです。

未登記建物であることのリスク

建物を未登記のままで放置すると、どのようなリスクが生ずるのでしょうか。

具体的には、以下の点が挙げられます。

1.建物の売却やローンの担保に入れることができない

不動産の登記の手続上、まずは表題登記を行い、建物の物理的な情報を登記し、次いで所有権の登記(所有権保存登記)を行わない限り、売却して買主の名義に変更したり、ローンの担保として抵当権の登記をしたりすることができません。そのため、未登記建物のままでは、事実上、第三者に売却することや、その建物を担保に金融機関から融資を受けるといったことは難しくなります。

2.過料が科せられることがある

不動産登記法第47条では、建物を新築した者や表題登記がない建物の所有権を取得した者には、その所有権の取得の日から1ヵ月以内に表題登記を申請する義務があります。
そして、不動産登記法により登記の申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ると、最大10万円の過料が科せられてしまう可能性があります。
そのため、先に紹介したように、未登記建物は相続登記の義務化の対象とはならなくとも、未登記建物であることを放置すると、結局は表題登記を怠ったことで過料が科せられる可能性があるのです。

第164条 第36条、第37条第1項若しくは第2項、第42条、第47条第1項(第49条第2項において準用する場合を含む。)、第49条第1項、第3項若しくは第4項、第51条第1項から第4項まで、第57条、第58条第6項若しくは第7項、第76条の2第1項若しくは第2項又は第76条の3第4項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する。

第47条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。
2 略

引用元:e-Gov 不動産登記法

3.自分の所有建物であると第三者に主張することができない

不動産は、登記をすることで第三者に対してその権利を主張することが可能となります。そのため、万一未登記建物について第三者と所有権を巡り争いが生ずることがあると、互いに自分が所有者であると主張することができないということになります。
その場合、裁判等を通じてどちらが正当な所有者であるか決着を付けなければならないことがあるのです。