遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って遺言の全部または一部を取消すことができます。

遺言の取消しには、次のような方法があります。

詐欺・強迫による取消し

遺言者が遺言をするにあたり詐欺や強迫を受けていた場合には、民法96条により遺言を取消すことができます。この取消しには、遺言が効力を生ずる前、つまり、遺言者が生きているうちに自ら遺言を取消す場合と、遺言が効力を生じた後、つまり、遺言者が亡くなった後にその相続人が取消す場合とがあります。

遺言者の意思の変更による取消し

これは、詐欺や強迫がない場合に、遺言者が自発的に遺言の内容を取消すこと、すなわち遺言の撤回を意味します。

負担付遺贈について、受遺者が負担の義務を履行しないための取消し

負担付遺贈とは、受遺者に一定の行為をさせることを内容とした遺贈です。
負担付遺贈がなされた場合において、負担の義務が履行されないときは、相続人は、相当の期間を定めて履行を催告し、期間内に履行がなければ、その負担付遺贈をする旨の遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます。

その他、遺言者の行為により遺言が取り消されたとみなされる場合

上記の取消しの場合とは異なり、遺言者に一定の事実があった場合には、遺言者の真意のいかんを問わずに法律上遺言が撤回されたものとみなされることがあります(法定撤回)。

  • 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触している部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条①)。
  • 遺言者が遺言をした後、その内容と抵触する生前処分などの法律行為をした場合、これらの行為で遺言の抵触する部分を撤回したものとみなされます(民法1023条②)。
  • 遺言者が故意に遺言書を破棄した場合、その破棄した部分については遺言を撤回したものとみなされます(民法1024条前段)。
  • 遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合、その破棄した部分については遺言を撤回したものとみなされます(民法1024後段)。

なお、遺言の取消権は事前に放棄することはできません。もし、放棄する旨の念書などがあったとしても、撤回権の放棄は無効となります。

これは、予め遺言の取消権の放棄を認めると、第三者の強迫等によって放棄を強制されてしまうおそれもあるからです。

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