中小企業経営者Aさんの場合
Aさんは、40年前に会社を興し、一代で従業員40人程の会社に成長させました。
従業員40人といえども、事実上、Aさんがすべての株式を保有し、役員を務めるワンマン経営の中小企業です。
Aさんは5年程前に妻Bさんに先立たれましたが、子供が二人(長男のCさん、二男Dさん)あり、長男Cさんは会社の副社長も務めてくれています。
行く末、Aさんは会社の経営を長男Cさんに任せたいと思っていますが、株式の譲渡などはしていません。
そんな中、Aさんは突然脳梗塞で倒れ、帰らぬ人となってしまいました。
Aさんには遺言書はありませんでした。
問題点と解決方法
Aさんのように、事業を経営している方にとって、ご自分の亡き後、会社の経営をめぐり相続人間で争いなどが起こってしまうことは、会社の経営・財務基盤を弱体化させることになりかねない大きな問題です。
特に、会社の株式などの大部分を経営者の方が握っているいわゆるワンマン経営の会社の場合、経営者の死亡により株式が分散することで、致命的な打撃を受けることがあります。
Aさんの場合、会社の株式をすべてAさんが保有しており、Aさんの亡き後、法定相続分どおりに長男BさんとCさんが株式を相続してしまうと、株式を2分の1づつ保有することになります。
すると、会社の意思決定の機関である株主総会の決議について、どちらか一方が反対をすると、決議に賛成する株主の議決権が絶対に「過半数」には及ばないことから、決議は成立せず、会社としての決定事項が何も決められないという事態に陥ってしまうおそれがあります。
もちろん、BさんとCさんが共同経営者として、手に手を取って会社を盛り立てていく、という状況であれば、親として、経営者としてこれ程嬉しいことはないかもしれません。
しかし、現実はそうはいかないものです。
このようなケースでは、Aさんが生前、遺言書で経営する会社の株式については後継者となるべきBさんに全部を相続させるか、会社にとって重要な決定事項を1人で決められる程度(4分の3以上)の株式を相続させることとし、二男のCさんには、その分預金や不動産などを相続してもらうことにして両者のバランスを取り、遺留分に配慮した遺言書を作成しておけば、トラブルを未然に防止することができるでしょう。
ポイント
- 会社経営者や自営業者の方は、遺言書を書きましょう。
- 会社の後継者には、会社の株式などを優先して相続させましょう。
- 後継者以外の相続人には、遺留分に配慮し、他の財産を相続させましょう。
- 遺言書は、元気なうちにしか、書けません。
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