相続放棄とは、亡くなった被相続人との関係で、その相続については初めから相続人ではなかったことにするための手続です。
相続放棄をするためには、原則として自己のために相続の開始があったことを知った(一般的には、自分が相続人となったことを知った)時から3ヵ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して相続放棄の申立を行い、家庭裁判所の裁判官に放棄を認めてもらう必要があります。
相続放棄をすると、法律上は相続人ではなくなるので、借金などのマイナスの財産だけでなく、預貯金や不動産などのプラスの財産も一切相続することができません。
では、相続放棄をした場合、遺族年金は受給できるでしょうか。
結論としては、相続放棄をしても遺族年金を受け取ることはできます(受け取っても問題ありません)。
遺族年金とは
遺族年金とは、国民年金や厚生年金保険に加入中もしくは加入していた被保険者が亡くなった場合に、その方によって生計を維持されていた遺族の方が受け取ることができる年金のことです。
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、亡くなった方の年金の加入状況などによって、いずれか又は双方を受け取ることができるものとされています。
遺族基礎年金の受給要件
遺族年金は、次の1から4のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに支給されます。
- 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
- 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
- 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
- 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
なお、1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和18年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。3および4の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間並びに65歳以降の厚生年金保険の被保険者期間を合算した期間が25年以上ある方に限られます。
遺族基礎年金の受給対象者
死亡した方に「生計を維持されて」いた、以下の遺族が受け取ることができます。
- 子のある配偶者
- 子
子とは18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方をさします。
子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されません。
なお、死亡した方に「生計を維持されて」いるとは、原則として次の要件をいずれも満たしている場合をいいます。
- 亡くなった方と生計を同じくしていること。
(原則として同居していること。別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族である等の事情があれば認められる場合があります。) - 収入要件を満たしていること。
(前年の収入が850万円未満であること。または所得が655万5千円未満であること。)
相続放棄をしても遺族年金は受け取れる
遺族年金は相続財産に該当する遺産ではありません。
先に紹介したとおり、遺族年金はいわゆる法定相続人が相続人の地位で受け取るものではなく、法律の受給要件を満たした人が固有の権利として受け取ることができるものです。
そのため、遺族年金については、受給要件を満たしている方であれば、相続放棄をした場合でも問題なく受け取ることができます。
ただし、遺族年金を受給するには、年金請求書を提出する必要があります。
遺族基礎年金の請求先
遺族基礎年金は、国民年金加入中の方が亡くなったとき、その方によって生計維持されていた「18歳到達年度の末日までにある子(障害の状態にある場合は20歳未満)のいる配偶者」または「子」が受けることができます。
遺族基礎年金の請求書の提出先は住所地の市区町村役場の窓口になります。
ただし、死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターになります。
遺族厚生年金の請求先
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者中または被保険者であった方が亡くなったとき、その方によって生計維持されていた遺族が受けることができます
遺族基礎年金の請求書の提出先は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターになります。
遺族基礎年金を請求する場合の提出先
遺族年金を請求する場合の提出先は、住所地の市区町村役場の窓口です。
ただし、死亡日に国民年金第3号被保険者だった場合は、年金事務所または年金相談センターとなります。
遺族年金は相続放棄の後でも請求できるが時効に注意
相続放棄をしても、受給する権利が発生してから5年以内であれば、遺族年金を受給することができます。
逆にいえば、遺族年金を受給する権利は、原則として、受給する権利が発生してから5年経過すると、時効により消滅してしまいます。
ただし、受給権が発生してから5年を経過した場合でも、時効で消滅するのは5年を経過したところから順番に時効消滅するに過ぎず、全部がいっぺんに時効で消滅するものではありません。
このように、相続放棄の手続をした方であっても遺族年金を受給する権利がありますし、全部が時効で消滅してしまう前であれば、数年が経過しても遺族年金を請求することができますので、諦めてしまわないようにしてください。
年金を受ける権利(基本権)は、権利が発生してから5年を経過したときは、時効によって消滅します(国民年金法第102条第1項・厚生年金保険法第92条第1項)。
ただし、やむを得ない事情により、時効完成前に請求をすることができなかった場合は、その理由を書面で申し立てていただくことにより、基本権を時効消滅させない取扱いを行っています。(平成19年7月7日以降に受給権が発生した年金について、時効を援用しない場合は、申立書の提出は不要です。)
引用元:日本年金機構
