相続放棄と遺産分割協議に関するよくある誤解
たとえば、亡くなった方(ご主人様)に奥様と子供さんが2名いらして、三者の話し合いで土地や建物を奥様の名義にしよう、というときは、「遺産分割協議」により手続を行うことになります。
このようなケースで、「相続放棄」の手続を行うべきではありません。
なぜなら、このケースで子供さん二人が相続放棄をしてしまうと、法律上、初めから子供がいないものと扱われる結果、亡くなった方の尊属(お父様やお母様)があればその尊属が、尊属がすでに亡くなっている場合には亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となってしまいます。
つまり、子供さん2人が財産を相続せず、奥様が全財産を相続することが相続人の希望であったにもかかわらず、子供さん2人が「相続放棄」をしてしまった結果、当初予定していなかった尊属や兄弟姉妹が法定相続人となってしまうということになるです。
しかも、このようなケースでいったん「相続放棄」をしてしまった場合、法律を誤解していたとか、勘違いしていたといった理由でもって既に行った「相続放棄」を取消すことは認められません。
相続放棄と遺産分割協議の決定的な違い
相続放棄は相続人であること自体を辞める手続、遺産分割協議は相続人であること維持したまま財産の分配について相続人どおしで話し合う手続、という点は前述のとおりです。
では、両者を区別する(つまり、どちらの手続がご自分に合っているのか判断する)上で、決定的な違いは何かといいますと、それは、対外的な効果にあります。
つまり、相続放棄や遺産分割協議の効果を第三者に対して主張する際に、どのような違いがあるか、ということです。
相続放棄の効果は、単に身内の間だけの話に限らず、債権者などの第三者に対しても主張することができます。
一方、遺産分割協議の効果は、債権者などの第三者に対しては、それらの者の承諾を得ない限り、無条件では主張することができません。
たとえば、亡くなった方に借金があった場合、「相続放棄」をした相続人は、債権者に対して「自分は相続放棄をしたから払う義務はない」ということができますが、「遺産分割協議」をして債務を承継しないと合意しただけの相続人はそのような主張をすることができません。
それは、「遺産分割協議」はあくまでも身内の話し合いの結果にすぎないからです。
まとめ
遺産分割協議で済ませるか、相続放棄の手続を行うべきかは、債権者など第三者に対して客観的な形で、自分が相続人ではない(=借金を返済する義務がない)ことを主張する必要があるか否かで決めるべきものといえます。
ただし、相続放棄には3ヶ月以内に家庭裁判所に対する手続を行う必要がありますから、借金の有無などについて調査をする時間を考慮すると、決して時間的余裕がない点に注意が必要です。
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