相続登記を申請する場合、遺産分割協議書は必ず必要になるわけではありません。
事案により、必要となる場合もあれば、必要ない場合もあるのです。
次のケースでは、相続登記を申請する場合でも、遺産分割協議書を用意する必要はありません。
ケース1 遺言書の内容に従い相続登記をする場合
自筆証書遺言であれ公正証書遺言であれ、被相続人が遺言書を遺しており、その内容に従って相続登記をする場合には、遺産分割協議書を用意する必要はありません。
遺言書は、遺産分割協議よりも優先されるため、法的に有効な遺言書が存在している場合には、他の相続人の同意や協力がなくとも、遺言で指定された相続人の名義に相続登記を行うことができるのです。
むしろ、有効な遺言書が存在する場合、相続人間の協議で遺産を分けるといった相続人の意思が介在するまでもなく、亡くなった被相続人の意思に従って登記をすることになるのですから、遺産分割協議書を作成する余地がないといえます。
なお、遺言書に基づき相続登記をする場合、他の相続人が何人いるとか、他に誰が法定相続人になるかといったことは証明する必要はなく、要は被相続人が亡くなった事実と相続する側が生きている事実を故人の除籍謄本、相続する人の戸籍謄本で証明すれば良いことになります。ただし、ご自宅に保管されていた自筆証書遺言の場合、原則として家庭裁判所での検認の手続を経る必要があります。
ケース2 相続人が1人しかいない場合
たとえば、被相続人の配偶者は被相続人より前に亡くなっており、法定相続人は子1人だけであるといったように、相続人が1人しかいない場合も、ケース1と同様、遺産分割協議をする余地もなく、単独の相続人が相続をすることになりますので、遺産分割協議書を用意する必要はありません。
もともと相続人が複数いた場合でも、他の相続人が相続放棄をした結果、相続人が1人になった場合も、最終的に相続権を有する相続人が1人であれば、遺産分割協議書は必要ありません。
なお、相続人が1人しかいない場合の相続登記の申請をする場合でも、相続人はその1人しかいないことを証明する必要がありますから、故人が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本等を用意する必要があります。また、相続放棄をした法定相続人がある場合、家庭裁判所によって相続放棄が認められたことを証明する「相続放棄申述受理証明書」を用意する必要があります。
ケース3 法定相続分どおりに相続登記をする場合
法定相続分どおりに相続登記をするとは、民法に定められた比率で登記をすることをいいます。
たとえば、法定相続人が子Aと子Bの2人であり、広さと経済的価値のまったく同じ甲土地と乙土地という2筆の土地があり、甲土地をAが相続し、乙土地をBが相続するといった場合、一見するとAとBが2分の1の法定相続分に従って相続をしているようにも見えますが、これでは法定相続分どおりの登記とはいえず、遺産分割協議書を作成する必要があります。この例で法定相続分どおりの登記をするとは、甲土地も乙土地もAとBの持分を2分の1とする共有名義の登記をすることをいいます。なお、法定相続分どおりに相続登記を行う場合にも、被相続人の出生から死亡に至るまでのすべての戸籍、相続人の戸籍などを用意して法定相続人が誰であるかを証明しなければなりません。
