抵当権は、ある債権が履行されるよう担保するために、不動産などに設定される担保物件です。
銀行から住宅ローンを組んで融資を受けた場合などがその典型で、住宅ローンを組まれると、ほぼ100パーセント、購入した土地や建物には抵当権が設定されます(抵当権の詳細ついては、こちらの投稿【「そもそも、抵当権って何?」】で説明しておりますので、お時間がある方はご確認ください)。
住宅ローンを完済すると
抵当権は債権担保のために設定される権利(つまり、お金を返さなかったら担保に入れた土地や建物を競売して優先的にお金を回収できる、ということです)ですから、その債権自体が消滅してしまえば、抵当権もその運命を共にし、消滅します。
これを抵当権の附従性といい、債権もないのに抵当権が存続し続けることは法律上はありえないことになっています。
ですから、住宅ローンを完済した場合、完済と同時に銀行に対する債務が消滅し、抵当権も当然に消滅することになるのです。
抵当権の登記は自動的には消滅しない
ここで注意しなければならないのは、住宅ローンの完済により債務が消滅し、債権の消滅と同時に抵当権も消滅することになっても、不動産に設定された抵当権の登記は、自動的には消滅しないということです。
そもそも、登記とは、不動産を管轄する法務局(登記所)に当事者が申請することによってなされるものですから、住宅ローンが完済になって抵当権が消滅したとしても、「抵当権の登記を抹消してください」という登記を申請しなければ、自動的には抹消されないのです。
つまり、住宅ローンが完済になり抵当権が消滅していても、その旨の「抵当権抹消登記」を当事者が申請しない限り、抵当権の登記はいつまでも、登記上は残り続けてしまうのです。
抵当権の登記を抹消しなければならない状況
このように、住宅ローンを完済すると抵当権が消滅した場合、一般的には、銀行などの金融機関からは「完済証明書」とともに「抵当権解除証書」などの抵当権抹消登記に必要な書類一式が交付されます。
これにより、不動産の所有者としては、これらの書類を用いて「抵当権抹消登記を申請することができる」状況になるわけですが、実際には、登記の申請が行われないままになってしまうというケースもあります。
それは、、、
- 書類を受け取る際にきちんと説明を受けていなかった
- そのうちやろうと思っていたが、そのままにしてしまった
- 書類を受け取ったかどうかすら、まったく記憶にない
- 書類を受け取ったものの、なくしてしまった
などといった理由が多いようです。
確かに、抵当権の登記が残っていても、登記簿にその旨の記載があるだけで、日常生活に支障があるようなことはありませんから、そのままにしてしまう気持ちも分からなくはありません。
ただし、次のような際には、確実に抵当権抹消登記をしておく必要が生じます。
不動産を売却する場合
登記は、第三者対抗要件といって、登記をすれば第三者にその権利の存在や内容を主張することができます。逆に言えば、第三者としては、登記されている内容は一応は正しいものだろう考えることになりますから、住宅ローンが完済になり抵当権は消滅していたとしても、抵当権の登記が残っているとしたら、第三者とすれば、まだローンが残っていて抵当権も消滅していない、と考えざるを得ないことになります。
そのため、抵当権が設定されている(過去されていたが抵当権の登記が抹消されずに残っている)不動産を第三者に売却する場合、事前にその抵当権を抹消する登記を完了させておく必要が生ずるのです。
不動産を担保に新たな融資を受ける場合
同様の理由により、新たなローンを組んでその不動産を担保に入れようとするならば、その不動産に設定されている抵当権は予め抹消しておく必要が生じます。
融資の際の担保として設定する抵当権には、優先順位があり、先に登記されている抵当権が遅れて登記された抵当権に優先しますから、先に設定されている抵当権が残ったままでは、次の融資を受けるための条件が満たされなくなってしまうのです。
不動産を相続する場合
相続が発生し、AとBの2つの不動産が相続財産にある場合において、XとYの2人の相続人が遺産分割協議を行う場合を想定してみてください。この場合に、抵当権の登記があるAという不動産と、抵当権の登記のないBという不動産があり、他の条件が同じであったとしたら、あなたはどちらの不動産を相続したいですか?
どうせなら、抵当権のないBの不動産を相続したいと考えるのではないでしょうか。
ですから、公平な遺産分割を行う場合などは、予め抵当権抹消登記をしておき、相続人の無用な不安を払拭しておく必要があります。
まとめ
いかがでしたか。
抵当権抹消登記は、法律上の期限などはないものの、いつか必ず抹消しなければならない状況が訪れます。
あなたが今、その必要性を感じなくとも、あなたが亡くなった後、相続人が必要に迫られる状況になることもあるのです。
その際、慌てて手続をしようとしても、書類を紛失してしまったり、関係者の協力が得られなくなってしまうなど、なかなか抵当権抹消登記ができなくなってしまうこともあります。
ですから、住宅ローンなどが完済になり、抵当権抹消登記ができる状況となった場合には、なるべく速やかに、抵当権の抹消登記を行うようにするべきでしょう。
なお、当事務所では、抵当権抹消登記定額プランをご用意しております。
お気軽にご相談ください。
司法書士による無料相談受付中!
司法書士田中事務所では、相続登記(土地建物の名義変更)、遺言書作成、相続放棄、成年後見、生前贈与、財産分与、抵当権抹消などの手続に関する無料相談を行っています。
ご相談はお電話はもちろん、専用フォームからも24時間受け付けております。
土日・夜間のご相談も可能です。