協議離婚が成立し、不動産を財産分与として相手方に譲渡することが決まった場合でも、名義変更の登記(財産分与による所有権移転登記)の手続そのものには法的な期限はありません。
そのため、離婚が成立し、財産分与の協議がまとまっているにもかかわらず、名義変更の登記をせずに放置してしまうという方がいらっしゃいます。
しかしながら、登記をせずに放置してしまうことには、大きなリスクがあります。
そこで、今回は、離婚による財産分与が成立したにもかかわらず、長期間登記をせずに放置してしまうことのリスクについて考えてみたいと思います。
リスク1 相手方と連絡が取れない!
離婚をすると、お二人の生活は別々になりますから、初めのうちはお互いの連絡先や住所等を把握していても、次第に疎遠となり連絡が取れなくなることも少なくありません。
しかし、離婚による不動産の名義変更(財産分与による所有権移転)の登記手続では、財産分与する方と受ける方の双方が手続に協力する必要があります。
そのため、協議が成立したにも関わらず、長期間登記をせずに放置し相手方とのコンタクトが取れない状態になってしまうと、名義変更の登記ができなくなってしまうということが起り得ます。
リスク2 不動産が第三者の名義になっていた!
不動産は、登記をすることで、第三者に対して自分が所有者であると主張することができます。
逆に、離婚による財産分与の協議が成立していても、財産分与による所有権移転の登記をしなければ、自分が所有者であることを第三者に主張することはできません。
そのため、財産分与の登記を放置している間に、離婚の相手方がその不動産を第三者に売却し名義変更をしてしまったりすると、もはや「その不動産は財産分与で私がもらったものだ」と主張することできないということが起り得ます。
リスク3 住宅ローンが滞納され差押えられてしまった!
たとえば、財産分与の対象となる住宅が金融機関の住宅ローンの担保(抵当権)に入っている場合において、所有者の元妻がその住宅を財産分与として取得したものの、登記やローン内容等の変更をしないまま放置し、離婚したご主人が家を出て行ってしまったようなケース。
このようなケースでは、出て行ったご主人様が誠実にその後も住宅ローンの返済を続けてくれれば良いのですが、実際には返済が滞ってしまうことが少なくありません。
そして、この場合、返済が滞ってしまっている以上、最終的には住宅が金融機関から差押えられ、強制競売になって他人の手に渡ってしまうということが起り得ます。
リスク4 必要書類や手続が複雑になってしまった!
離婚後、長期間が経過すると、お互いに引越しをしたり、再婚や死亡などといった生活に大きな変化が生ずるものです。
たとえば、離婚による財産分与の登記をしないうちに、離婚したご主人が再婚し子供を設け、その後死亡したというケース。
このようなケースでは、名義変更の登記をするために、亡くなった元夫に代わってその方の相続人(再婚後の妻と子)の協力を得なければならないということになります。
この場合、そもそも亡くなった元夫が本当に財産分与をしたのか否かといった点について争いになってしまったり、必要書類や手続に協力してもらえないということが起こり得ます。
まとめ
離婚が成立するまでの過程で多くの労力を費やし精神的にも肉体的にも疲れてしまい、その後の登記の手続が後回しになってしまうことは、よく理解できます。
しかし、こういった手続は後に回したからと言って、一つも良いことはありません。
「相手に会いたくない」、「手続が面倒くさい」など、色々な理由がおありになるのでしょうが、是非、お早めに手続をしておきたいところです。
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